あなたは本当にレンタカー屋になりたいの?

猫も杓子もレンタカー

 

いま、レンタカーを始めたいと考えている会社がさらに増えていると感じています。一昔前は「レンタカーなんて面倒くさくてやってられない」と考える経営者が多かったと思いますが、時代が変わったのでしょうか「レンタカーやろうかな」と考えている人たちが増えてきました。

 

実際に私たちの元にも、自動車会社からのレンタカービジネス相談が、良く入ります。さらに異業種の方からもレンタカー参入の相談も毎日のようにあるのが実際のところです。ある意味レンタカーバブルといえる状況なのかもしれません。個人的には、このレンタカーバブルに不安を感じています。

 

そこで今回は、レンタカービジネスを行うにあたって「リスクが上がる行為」について考えてみたいと思います。あなたの会社のレンタカービジネスを拡大するにあたり、どんなことがリスク上昇要因になるのでしょうか。一緒に考えてみましょう。

 

 

クルマの台数を増やしすぎる

レンタカービジネスで一番よくあるパターンが、台数を増やし過ぎてしまうことです。地域でレンタカービジネスを基本に則りきちんと進めていると、ほとんどの会社でレンタカーの車両台数も増えてくると思います。会社の規模や地域によっても違うと思いますが、数台から始めたレンタカーが10台20台と増えていくお店も多いです。私のクライアントもほとんどそうなります。

 

で、この時、自分自身がわからないまま、車両台数があなたの経営力を超えてしまうと、大きなリスク要因となります。実際のところ、世の中には、レンタカー台数を増やしすぎて失敗する会社がたくさんあります。

 

これは、株式投資で失敗する原因と良く似ています。株式投資で失敗する多くの理由は「ポジションを取りすぎてしまう」ことにあるのですが、最初は数十万円単位で株の売買をやっていて、ちょっと利益が出たからといって信用取引に手を出し何千万もの売買をしているうちに大暴落が来て破産する・・レンタカーの台数もこれと全く同じです。レンタカーでもまさにそんなことが起こるのです。

 

レンタカーが10台で50万円の売上になるのであれば、100台あれば500万の売上になるじゃん!と単純に考えてしまうのです。レンタカーは、台数を増やすことが簡単にできてしまうので、このようなことが簡単にできてしまいます。

 

会社の規模を超えて台数を増やしてしまうと、レンタカービジネスがレンタカー会社になってしまうのです。 代車のコスト回収や自社の新規ユーザーを増やすために始めたレンタカーのはずが、いつの間にかレンタカー会社になってしまうと、レンタカー屋として利益を上げなくてはならなくなるのです。 そのリスクをわかっていない経営者が本当に多いです。

あなたはレンタカー屋になりたいのですか?

 

 

ある程度自社の台数が増えたときに、その台数が自社のリスクに合っているかどうか、冷静な判断をして欲しいと思います。もっとはっきり言いましょう。あなたにその台数を管理する能力がありますか?できれば自社で管理できる台数を定め、その台数を上限に運用するようなリスク管理も大事だと思います。レンタカーの台数が増えるにつき、経営者の能力もあげなければなりませんが、だいたいそれに見合っていないパターンがほとんどです。

レンタカーがうまくいきすぎてびっくりするような台数になってしまっている会社があるとしたら、痛い目みないうちに早めに台数を絞りましょう。

 

システムに投資してしまう

レンタカーをスタートして軌道に乗ると「貸し借りが面倒」と感じてしまう経営者がいます。そういうタイプの人は、地域レンタカーに向きません。

 

地域レンタカーの本質は、レンタカーの予約時や貸し借りのときにコミュニケーションを増やすことにあります。その時の接客や貸し出しが手間と考える人は、地域レンタカーは辞めたほうが良いと思います。

このようなタイプの経営者は、貸し出しをシステムに頼って自動化しようとしたり、予約時の返信メールをしなくなったり、電話受付をやめてWEB一本にしたりしてしまいます。世の中には、そんなレンタカーの貸し出しの手間を解決する素晴らしいサービスがあるのですが、本当にあなた会社の規模で必要ですか?

 

あなたがやらなければならないレンタカービジネスというのは、貸し出しや返却をするときに、お客さんとコミュニケーションをとることがとても大事なのです。面倒くさいと思う、貸し出し時の説明やお客様との雑談、電話応対や確認メールの返信など一つ一つが、あなたの会社の価値を上げることにつながります。

もしあなたがレンタカー屋になりたいのであれば、どうぞシステムを導入して人件費を抑え、貸し出しは自動化にして、無人の店舗でWEB予約したクルマを貸し出せば良いと思います。もちろん鍵は車内にあるので、貸し出しも無人で対応できます。システムを導入することで、楽にレンタカーの貸し出しができるようになるでしょう。

 

でもちょっと待ってください。我々がやらなければならないのは、レンタカーを貸したり返却したりするときに、見込み客と話し、雑談してお客さんとコミュニケーションをとることが大切だとはおもいませんか?その面倒な事を行うことで、レンタカーをきっかけに車検や点検の入庫に繋がり、車の買い替え相談などが発生するわけです。

 

何より、システムは一度入れると毎月必ず発生するコストとなり、なぜが顧客のロイヤリティは薄れます。繰り返しになりますが、あなたはレンタカー屋になりたいのですか?

 

安易な値上げと強気な価格設定

安いと気軽に借りられて見込み客が増えるのに、みんな値上げしてるからと安易に値上げをしたり、変なプライドで安いプライス設定ができない経営者が多いです。所詮は中古車のレンタカーです。せっかくなので、地域最安値を目指して戦略的に価格を引き下げ、他店が着いてこれない価格でスタートしましょう。レンタカーで儲けたいと企んでいるライバルを出し抜き、まずは安い価格でスタートするべきです。

 

何よりレンタルプライスを高くすればするほど、サービス自体の付加価値もあげなくてはなりません。当然です。価格があがれば顧客の期待値もあがります。あなたの整備工場に、あなたのスタッフに、その価値がありますか?

 

レンタカー事業は、参入障壁がとても低いビジネスです。あなたの整備工場の向かいにもっと良いレンタカー屋さんができたら、一気にお客さんを取られることになります。

 

「レンタカー」という商品だけで勝負していると、あとから出てくるもっと良いレンタカー屋さんに必ず負けます。なぜ自動車整備工場がレンタカーを始めるのか?あなたの地域レンタカーはどんなサービスを提供するべきなのか?その意味をよく考えて経営判断しましょう。自動車販売店が代車を活用してリーズナブルな価格設定で始められるのが専業レンタカーに対する兼業レンタカーの優位性なのです。そこんところを忘れないように。中途半端な価格帯で伸び悩んでいるレンタカーサービスがたくさんあります。

 

 

マンスリーレンタカーの方が楽じゃん

いま経営者に一番人気の安易なマンスリー思考も注意が必要です。毎日クルマを貸し出したり返却したりするのは面倒。それより1ヶ月に1回の貸し借りするだめのマンスリーレンタカーの方が楽じゃん。と考える経営者が本当にたくさんいます。あなたは楽かもしれませんが、まったくお客さんの方を見ていません。ぶっちゃけ、マンスリーレンタカーなんてそんなに需要ありません。(もしそんな需要があったら大手の会社がやっています)

大丈夫です。安心してください。あなたの会社にお客が回ってくるほど、そんなにマンスリーレンタカーの需要はありません。少ない需要をみんなで取りに行こうとしている状態なので、過当競争となること間違いありません。最近私のところに相談があるのも、だいたいマンスリー貸し出しを狙っている人が多いです。もう少しユーザーの方を見たほうが良いと思います。

 

 

以上が、多くのクライアントや全国各地から毎日相談を受けている私の個人的な感想です。皆さん、レンタカービジネスがうまくいきかけると、レンタカー屋になろうとしてしまうのです。あなた本当にレンタカー屋になりたいですか?地域の大手レンタカー会社と戦うつもりでしょうか。こんなに参入障壁が低いビジネスでレンタカー専門店としてうまくいくと思っているのでしょうか。

 

いや、、もちろん成功しているレンタカー会社があるので100%あなたが失敗するとは限りません。あなたにビジネスの才能があれば、第三極の新しいレンタカー会社として地域でナンバーワンが取れるようになるかもしれません。

 

しかし、繰り返しますが、本当にあなたはレンタカー屋になりたいのですか?レンタカーをスタートする時の目的を見失わないように、身の丈に合ったレンタカーサービスを地域で提供して欲しいと思うのです。レンタカー屋にならずにレンタカービジネスを続けることこそが、地域であなたの会社が生き残るための秘訣であり、あなたの本業である自動車整備や販売店に潤いを与えるレンタカーサービスになるはずです。

 

ぜひ、一年に一度くらいは自社のレンタカーを冷静に振り返り、身の丈にあっているサービスになっているかどうか?アクセルを踏み過ぎていないかどうか?確認してみてください。

 

あなたの会社も、知らないうちにリスクを取り過ぎているかもしれません。