街の整備工場が主役に返り咲く時代がきた
自動車の整備を巡る環境が大きく変わろうとしています。コロナ禍以降、ディーラーなどの大手が担ってきた役割が揺らぎ、結果として「街の整備工場」にかつてないほどの追い風が吹き始めています。あなたはどう思いますか?
ユーザーは、いま何に困っているのか。
なぜ街の整備工場に注目が集まるようになったのか。
そして、整備工場が地域で圧倒的に選ばれるための仕組みはどう作ればいいのか。
今後10年、あなたの整備工場が生き残るための指針になるはずです。
ディーラーが整備の受皿としての限界を迎え始めています
「ディーラーなら安心」という神話の崩壊
かつて、整備の第一選択肢はディーラーでした。私がメカニックとして働いていた時代からつい最近まで、
「ディーラー=品質が高い」
「ディーラー=安心」
という認識が社会全体に浸透していました。しかし、その信頼が揺らぎ始めています。最大の理由は整備料金高騰と気軽さの欠如です。あなたは、ディーラーの正規料金で整備などしたことが無いと思いますし、あまり価格調査などはされないかと思いますが、いま、ディーラーの整備代金は相当な値上げを行っているのが実態です。
もちろん、ディーラーには正規車両を扱うための高度な整備力(・・があると思われている)があり、それに見合ったコスト構造があるのは理解できます。様々な理由で値上げしていかなければなりません。一般庶民の目線で言えば、「この価格じゃとても整備をお願いできない」という状況になっているのが正直な所です。
さらに、ユーザーの価値観の変化も追い打ちをかけています。物価の上昇や所得の伸び悩みから、できるだけ車の維持費を抑えたいという強い意識が生まれています。この「維持費を抑えたい」というニーズと「ディーラーのメンテナンス料金の高騰」は、完全に逆方向に向かっています。
ディーラー整備の中心は“点検パック販売”へ
最近のディーラーのメンテンスは、単発整備で利益を出そうとしていません。整備収益の中心は「点検パック」「延長保証」「定額メンテ」などのパッケージ販売です。つまり、単発のオイル交換やブレーキ整備は利益の対象外であり、結果として単価が上がります。
ユーザーからすれば「ちょっと見てもらいたいだけなんだけど…」という軽い気持ちでも、高額なセット商品に誘導されたり、そのそも整備を嫌がられるため、ディーラーのサービスに違和感を覚えるのは当然なのです。
カー用品店は予約で一杯
そして、もうひとつの大きな受皿であったカー用品店のメンテナンス工場でも、今や状況が一変しています。理由はディーラーでも同様ですが、人手不足と働き方改革です。
・スタッフ不足で作業が回らない
・予約枠が常に埋まっている
・2ヶ月先まで作業不可
・電話もなかなかつながらない
実際私も、某大手カー用品店にATF交換の相談をしたところ、何と2ヶ月先まで予定が埋まっているとのことでした。これは決して東京だけの話ではなく、あなたの地域でも非常によく見られる光景なのです。
つまり今のユーザーは、
・ディーラーは高すぎるしそもそも嫌そう
・カー用品店は混みすぎていて入れない
・近くに知っている工場がない
という三重苦を抱えています。ユーザーは「安心して頼れる場所」が欲しい。しかしその受け皿がどこにもない。そして、この空白地帯を埋められる唯一の存在こそ街の整備工場なのです。
街の整備工場がユーザーに選ばれる3つの理由
ではなぜ、今こんなにも街の整備工場が求められているのか。
理由は大きく3つあります。
当日対応してくれるという圧倒的な安心感
ユーザーが最も望んでいることは「できれば明日、もしくは週末までに見てもらえるかどうか」それだけです。しかし、ディーラーは事前予約が必要で、しかも車を購入してメンテパックに加入しているお客優先、オートバックスなどのカー用品店のメンテ工場も1ヶ月以上先まで一杯、ガソリンスタンドはオイル交換以外作業不可、という現状では、そのごく当たり前のニーズでさえも満たされません。
そんな中、街の工場が「今週末までには何とか対応できますよ」と言えることの価値は計り知れないのです。ユーザーにとっては、救われたと感じるレベルの安心感が生まれるのです。この「気軽さ」「近さ」「即時対応」は、街工場にしか提供できない価値なのです。
料金が明朗でユーザー目線に近い
街の工場の多くは【適正】な価格設定をしています。
・過剰整備をしない
・必要な整備だけ提案する
・作業費が適正
こうした適正価格の文化は、ディーラーのような企業体では実現できません。ユーザーの多くは「車が大好きで、丁寧に幾らかけても良いので整備してほしい」のではなく「必要十分な整備を適正な値段でして欲しい」だけなのです。街工場の料金体系は、まさにそのニーズに合致しています。
顔が見える整備という安心感
街の工場は、ユーザーとの距離が近いことも特徴です。
・誰が作業したのか
・どんな整備をしたのか
・今後、何に気をつければいいのか
こうした“コミュニケーションの質は、大手より圧倒的に高いのです。実際、街工場では「〇〇さんのクルマ、ちょっと気になるところがありましたよ」という細かな声がけが自然に生まれます。この人の温度感が信頼を生み、長期的な関係性を築く基盤になっていきます。
軽整備こそが最強の「新規客獲得装置」
整備工場にとって、軽整備は単価が低い仕事です。しかし、マーケティングの視点から見るとまったく逆で、軽整備こそが最高の営業機会なのです。
ユーザーは軽整備で工場を試しているという事実
初めて行く工場に、いきなり車検や修理を出す人は少数です。ほとんどが、まずオイル交換やタイヤ交換で様子を見ます。ここで好印象を与えられるかどうかが、今後の売上を大きく左右するわけです。
・作業が早い
・説明が丁寧
・料金が明朗
・スタッフの印象が良い
・お店は清潔
これらの小さな積み重ねが、また来ようという気持ちにつながります。
軽整備はリピート頻度が高い
軽整備は小さな仕事ですが、来店頻度が多いですよね。
・オイル交換:年1~2回
・タイヤ交換:年3〜4回
・ワイパー交換:年1回
・バッテリー:2〜4年回
つまり、軽整備こそが継続的にユーザーと接触できる機会なのです。
軽整備から大きな売上へと発展していくという道理
軽整備で来店したお客様は、次の段階で、車検点検や一般修理、タイヤやバッテリー購入、事故修理、中古車購入や乗り換え相談といった高単価の整備やサービスへと進んでいくはずです。(きちっとしたサポート体制ができていれば)実際、私がサポートしている大分県のとある整備工場では、軽整備から車検に移行する割合が平均20%という結果も出ています。軽整備は利益が薄い仕事ではなく、未来の顧客をつかむ最強の入口なのです。
軽整備を集客装置に進化させる15の実践策
ここからは、今日から実行できる超実践的ノウハウをあなたの工場向けに、12項目に整理して紹介します。あなたの工場でもきっと実現出来るはずです。
ホームページに軽整備メニューを細かく掲載する
ユーザーは「料金と内容を知りたい」ただそれだけです。
料金・作業時間・使用部品・当日対応可否・タイヤ直送の可否、これらをあなたのホームページの必ず掲載してください。
「当日対応できます」を前面に出す
これは最強の武器です。実際にできるかどうかはさておき、まずは当日作業できることをアピールしましょう。
Googleビジネスプロフィールを軽整備特化で強化する
・オイル交換の写真
・タイヤ交換の写真
・作業メニューの投稿
・当日対応報告
これだけで検索数は大きく増えます。(Googleビジネスプロフィールの重要性については、あらためてメルマガにしたいと思います)
軽整備のセットメニュー化
・オイル+フィルター+ワイパー・
・タイヤ交換+バランス+バルブ
・パッド+ブレーキフルード
セット化は満足度UPと単価UPを同時に実現します。軽整備のセット料金をたくさん考えてみましょう。
LINE公式アカウントへの誘導
車検整備中の報告や終了案内を口実にして、LINEの登録を促しましょう。とにかく何かの口実をつけて顧客のLINEアカウントを取得するのです。車検時に「車検の仕上がり案内などをLINEでお送りしますので登録をお願いします」といえばOKです。2年かけて顧客全員のLINEアカウントを集めましょう。集めた後に何をするかは推して知るべしです。自動配信などを行えば、今までDMなどで行っていた顧客フォローがLINEでできて、再来店率が劇的に向上します。
工場の様子の写真を毎週投稿する
清潔なピットは信頼の象徴です。「この工場は稼働している」「繁盛している」という安心感”を与えます。ユーザーにとって、初めての整備工場は入りづらいものなのです。しかし工場の作業の様子をGoogleビジネスプロフィールやSNSなどに週1回投稿しているあなたの整備工場は、ユーザーにこう見えます。「この工場はちゃんと動いている」「お客さんが来ている店なんだ”」これだけで心理的ハードルが大きく下がり、試しに行ってみようにつながります。
ピット写真で最も大切なのは 「清潔感」 です。床が汚れていないか、工具が整理されているか、ピットが明るいか、スタッフが整った服装で作業しているか、こうした印象はユーザーにとって圧倒的な安心材料です。もちろん作業実績としてアピールできます。特に令和のユーザーは、お店に行く前にSNSやGBPで雰囲気を必ず確認します。その確認材料として、整備工場の写真はとても強い武器になります。週1回投稿しているだけで、ユーザーは工場のことをしっかりした会社だと見なします。
オイル交換の作業風景を動画化する
10秒でも構いません。SNSでバズる可能性もあります。
「車をリフトアップ→古いオイルを抜く→新しいフィルターを取り付ける→規定量のオイルを注ぐ」という一連の作業をスマホで10〜20秒に編集し、“作業の丁寧さ・清潔なピット・スタッフの雰囲気”が伝わる短い紹介動画として公開することもできます。作業の丁寧さや工場の雰囲気が視覚的に伝わることで、初めての人でも安心して来店しやすくなり、結果としてオイル交換を入口とした新規客の獲得につながります。動画もSNS上では有効ですね。
「タイヤ直送OK」を打ち出す
ユーザーはインターネット上の専門サイトでタイヤを買う時代。取り付けできる工場を探しています。ユーザーがオンラインのタイヤ店などで購入したタイヤを、あなたの工場へ直接配送してもらってOKですと案内することで、持ち込み作業を歓迎する姿勢を明確に示すことができます。このタイヤ交換を行なうことは、新規集客に最も有効です。実際、私が知っているとある整備工場では、毎月何十件の新規集客を行っている会社があります。そのお客さんを顧客に転換することです。
代車がある場合は軽整備でも利用可とする
そこまでしてくれるの?という感動が生まれます。「たかがワイパーゴム交換で代車を出すの?」という気持ちもわかりますが、代車が空いているのであれば気持ちよく貸してしまいましょう。あとで返ってくるのですから。
電話対応の質を高める
このことは実はとても重要ですが、多くのお店でできていません。代表者がこのことについて問題意識を持っていないことが一番の問題ですが、友人知人などに自社に電話をかけてもらい、スタッフの対応を覆面調査してもらうことなども有効な改善策です。「落第」になることが多いと思います。今すぐ電話応対を改善しましょう。電話対応は顧客化の入口です。
SNSで今日の軽整備を紹介する
・今日のオイル交換
・今日のタイヤ交換
・今日のブレーキ整備
などのリアルな日常は大きな共感を生みます。日々の整備記録をSNSで配信しましょう。
料金を明確に出すこと
街工場の料金は、実は強烈な魅力です。様々な理由で価格を表示しない整備工場が多いですが、もったいないです。あなたが時価のお寿司屋さんに入店することができないように、ホームページの整備料金が記載されていない整備工場に、新規客は来店しません。
街の整備工場こそが地域のカーライフの中心になる
ディーラーの整備料金が高くなり、カー用品店が予約を受けきれなくなり、ガソリンスタンドが整備から撤退し始め、ユーザーは頼れる場所を失っています。結果、街の整備工場こそが最も重宝される時代がやってきたのです。
街工場の価値とは?
・適正価格であること
・当日対応が可能なこと
・顔が見える整備を行なうこと
・説明が丁寧なこと
・地域に密着していること
・気軽に相談できること
これらはすべて、すでに大手には真似できない街の整備工場の魅力なのです。もうできないのです。ディーラーでは。
軽整備を入口にして、ユーザーと信頼関係を築き、車検・点検・修理へとつなげていく。その循環を作れれば、あなたの工場は地域でなくてはならない存在になります。街工場は弱者ではありません。むしろ今、最も強い立場に立っています。この追い風を確実につかみ、地域に愛される整備工場として成長していってください。

