中古車のセールスのとき何をどのように話すか?

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あなたが初めてクルマを購入したのはどこのお店でしたか?あなたも今でこそ中古車屋さんですが、最初の一台は中古車販売店でクルマを購入したのではないでしょうか?かくいう私も、前後大破したクルマを原価で修理したクルマに乗っていますが、今から20年ちょっと前、初めて買ったクルマは、スポーツ系のクルマを売っている中古車販売店で普通に購入しました。
当時の私が購入を検討していた予算は約50万円。ターゲットは、AE86レビンorトレノの2Dr。色は白か白&黒のツートンを探していました。買う前から予算と車種は明確です。学生の身分で大きなローンを組むのはちょっと危険な気がしていましたので、自分なりに50万円という予算の上限を決めていたわけです。当時は今のようにインターネットなどもなく、月に1回発売される中古車雑誌を毎回目を皿のようにして調べていたところ、ある月に某中古車店で48万円で希望する仕様のクルマが在庫していることがわかり、雑誌発売直後、早速目的のクルマを見に行くことにしました。

実際にその中古車屋さんにいってみると、雑誌に掲載されていた48万円の白黒ツートンの2Drレビンの他に、65万円くらいのトレノ、そしてその2台より年式の新しい85万円くらいの3Dr赤黒ツートンのレビンが置いてありました。お店の展示場で目当てにしていた48万円のレビンを見ているあいだ、近くで洗車をしていた店員さんがいました。僕がクルマを見始めてから10分くらいはたったでしょうか。他に展示してある2台のハチロクも気になってきはじめたころ、洗車をしていた店員さんが、ようやく僕に近づいてきました。

その店員さんが近づいてきたとき、内心「騙されないぞ~~」っとおもっていたのですが、その店員のお兄さんは僕に近づき、「こんにちわ!!」と声を掛けてきました。(「いらっしゃいませ!」と言わずに「こんにちは」と声を掛けてきたところや、僕が来店した時は声を掛けずに10分もしてから近づいてくるあたり、今となってはそこそこの接客技術の持ち主であり、センスがあったのかなと思ったりもするのですが、とにかく真夏の炎天下の中、ツナギを着て洗車を終わらせた後のさわやかな汗と笑顔の店員さんには、私が近づいてくるときに感じた「騙されないゾ!」とおもった気持ちはどこへやら。僕の心には、「何でも相談できそうなクルマに詳しいお兄さん」という印象を与えるに十分な状況でした。

 

さて、そのさわやかな感じのお兄さんは(店員ではなくお兄さんと感じてしまっているところでもうすでにダメですが)、3台のハチロクについて、それぞれの”違い”を僕に説明してくれました。

  • ハチロクには、レビンとトレノがあること。
  • 2Drのレビンはすでに町中に走っていて、最近は3Drの方が「カッコイイ」と思われているのではないだろうか?ということ。
  • 白黒ツートンより台数の少ない赤黒ツートンも意外とカッコイイと思うということ。
  • 展示してある45万円の白黒レビンは低年式で、他の2台より多走行であること。
  • 85万円のレビンは高年式で、走行距離が少なく、前オーナーがおじさんで普通に使われていただろうということ。
  • 高年式低走行の方が故障する確立が格段に少ないということ。
  • この3台の中では85万円の3Drの赤黒ツートンが、価格は一番高いが故障する確立が一番低く安心して乗れるであろうということ。
  • 45万円の価格のクルマを買っても、もし故障が起きた場合修理代金が高くなってしまう可能性があるということ。
  • 低年式のクルマより高年式のクルマの方が売却するとき有利なこと。
  • 中古車の再販は、5万キロがひとつの目安になるということ。その際走行距離が短い方が高額売却できること。
  • 3台のうち、1・2台は来週別のお店に持っていってしまうこと。
  • もしこの中のどれかに興味があれば、今日中に返事をもらわないと、別店舗への移転手続きを止められないこと。

このようなことを僕に教えてくれました。
ただし、中古車のセールスなら必ずといって良いほど質問したくなる2つ事柄については、一切しませんでした。それは、「予算はいくら?」ということと、「購入時期は?」という2つの質問です。そのお兄さんは私に対して「予算はいくらなの?」とは全く聞きませんでした。3台見比べている僕が一番安いハチロクを見に来たのは知っていたはず。
しかしそれには一切触れず、僕が他の2台にも興味を持ち始めた所で近づいてきて、3台のハチロクの違いのみを説明していました。

 

僕が「他の2台は程度は良いけど高いからなぁ~」というと、「頭金をしっかり入れておけば、ローンの回数を適時調整すれば十分購入可能だよ」と言いました。購入時期についても全く聞きませんでした。そのかわり、今日中にある程度の結論を出さないと、つまり買う意思を表示しないと他のお店に移動させてしまうといいました。

そしてその営業マン、最後にこのような決めセリフを言いました。「安いクルマを買うと実際に乗り出してから後悔することが多いよ。でも、高いクルマを買っておくと、実際に買ってから「やっぱりこのクルマにしてよかった!」と満足することが多いよ!」

これで決まりです。僕はまた新たなローンを組むことになりました。結果的にこの営業マン、予算50万円のお客に対して、一言も「安くする」とも、「買ってくれ」とも言わずに、たった30分程の接客で80万円以上のクルマを売ってしまったわけです。

なぜこの営業マンは50万円が予算と決めていたお客(つまり私です)に、80万円のクルマを簡単に売ることができたのでしょうか?彼は、価格に関することや、購入するかしないかなど、他の営業マンが通常お客から聞き出す事柄には一切触れずに、

  • 低年式のクルマより高年式のクルマ、多走行より少走行のクルマの方が良い。
  • 低価格のクルマより高価格のクルマの方が買ったあとの満足感が高く後悔しない。
    そのようなことを話していました。

わかりますか?一般の営業マンが接客の際によく話すような【購入する前の問題点】について話しているのではなく、この営業マンは【購入した後どう感じるか?】について話していたのです。購入する前の問題点ってわかりますよね?予算や購入時期などのことですね。購入した後どう感じるか?ってわかりますよね?買った後の満足感や利便性などですね。その営業マンは、お客がクルマを買った後どう感じるか?についてクルマ屋としての意見を述べていたのです。価格や値引きや購入時期については一切触れずに。

もしこの営業マンが、私とのセールスの最初に「予算はいくらで?」なんていう質問をしたとしましょう。その後、総予算50万円と決めている僕に、「こっちのハチロクの方がいいよ!」なんて高い方のハチロクをすすめられたとしたら・・きっと「コイツは高い方を売りつけようとしているな!」と警戒されたでしょう。

「営業マンにはいいくるめられないぞ!」「予算を守って車を買うぞ!」「ローンは絶対組まないぞ。現金払いのみ!」「絶対損しないぞ!」などと考えて思いっきり警戒しているお客にたいして、何をどういう順番で話すか?によって、50万円の予算でクルマを買いにきたお客に総額100万近いクルマを売ることができるようになるのです。

クルマを買いにきたお客に対して何をどういう順番で話すか?これが重要。

みなさんは「まずお客さんに予算をお伺いして、それに近い車を提案しましょう!」などという教育を受けているかもしれません。ディーラー経験者に多いかもしれません。そう教えられますからね。しかし、それをいつ、どのような順番で話すか?については教えられていないのではないでしょうか。”それ”を先に話してしまうことで、その予算以上のクルマを薦めることが逆に難しくなってしまいます。

そうではなくて「予算以上のクルマを買うことがあとでどんなにメリットがあるか」について先に理解してもらわなければ、予算オーバーして高い車を買う必要性がありませんよね。多走行のクルマのリスク度合いが理解できたからこそ、多少予算オーバーでも少走行距離のクルマを選択できるのです。「今高いクルマを買うから下取りの時に高く売れる」ということです。
どうすればクルマが売れるようになるのか?簡単です。「お客のキモチを理解すること」自分がお客になりきって自分のセールスを見直すことです。コンサルタントや講師はこういいます。「接客の中からお客の予算を聞きだして在庫の中から良い車を提案しましょう。」無駄です。意味ありません。何をどういう順番で話すか?によってお客の予算などガラッとかわるから。お客には予算なんてあってないようなものだからです。でなければ、総額50万円のお客が100万円近いクレジットなど組みません。
でもそのお客は満足しているのです。「やっぱり高年式の高いクルマの方が良いよね!」と。

 

お客とのセールストークについて、今一度見直して見てください。

何をどういう順番で話すか?

   

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